戻る
#17 航空管制

 これから書くことを、雑感として書いて公開すべきかどうか大変迷ったのですが、書くことにします。決して茶化しているわけでも皮肉を言うわけでもなく、思ったことを素直に書きたいと思っています。
また、これから書くことは全て私の見解であり、箇所によっては訂正が必要となる場合もあるかもしれません。もしも関係者の方がお読みになって、間違っている事を気づかれた場合は、是非お知らせください。
 実はずっと昔、自分は航空管制官になりたかった。明確な理由は忘れたが飛行機に興味があった。パイロットにはなれないだろうなと子供心に感じていたのだが、やはり興味ある分野はトコトン一生懸命になるものである。学校の図書館で見つけた「ニアミス四十秒内の決断」という本と「管制官の決断 ニアミス、大空港の危機一髪」という2冊の本を読んだ時、航空管制官になりたいと強く思った。この本は、日本だけでなくアメリカなど諸外国で発生したニアミスについて詳細な記述がしてあり、専門用語解説やニアミス発生時の管制官とパイロットの無線交信記録、レーダーの画面など、400ページ以上にも及ぶ本である。この本はパイロットはもちろん、管制官にも媚びることなく、実際の出来事を記録という形で記述してあり、著者の解説がある。
 今回の日航機のニアミス事件を見て真っ先にこの本の存在を思い出し、遠い記憶がよみがえってきた。TVや新聞、インターネットなどでは悪者探しが始まり、中には客観的に解説してあるメディアもあったわけであるが、特にワイドショーなどでは自分が被害にあったかのような発言をするゲスト、記者会見でも、いかにも自分が国民の代弁をしているかのように声を荒げるレポーターが目についた。「ついさっきまで芸能ネタで楽しんでた人たちが、航空管制の現場を語って欲しくない」そう思った。人を無責任に非難することは誰にでもできる。誰に責任があるのかは、その現場を熟知している人間にしか判断できるはずがない。それなのに、いかにも自分が現場を知っているかのように他人を非難する人たちを見て、こんな番組をみるんじゃなかったと後悔した。
 事故の当事者の方々は言葉にできないほどの恐怖があったことだろう。時速約900Kmで空中を飛んでいる物体が数十mの間隔ですれ違うなんて・・・。特にパイロットの恐怖心は言葉では表現できないほどであったのではないだろうか?実機の操縦はプレステのゲームで操縦するのとはわけが違う・・・。
 このサイトからもリンクしている航空管制官のページが閉鎖された。今は掲示板だけ残っていて、今回の事故についても多くの意見が寄せられている。サイトの管理者によると、ホームページの閉鎖と今回の事故とは全く無関係であるという。その掲示板には、まさに現場で働いている方々(ようするに管制官)、航空業界に関わっている方々の声が寄せられていて、メディアで騒いでいることよりも当然真実で、生の声が伝わってくるような感じがする。自分は前述した本を読んでいる分、少しは現場の考え方が理解できるし、ニュースなども詳細にわかる。前述した本にも書いてあったような気がするが、人間が管制する以上、ニアミスは絶対にありえる。3次元で飛んでいる物体を2次元のレーダー画面で誘導しようなんて、誰が考えたっておかしい。でもそれにも理由があって、IT技術が進歩する前のシステムだから2次元データーを処理するだけでシステムが精一杯。3次元処理しているうちに飛行機はあっという間に進んでしまうわけである。今の技術なら3次元処理は可能かもしれないが、システムを全て入れ替えるには莫大な費用がかかるのだそうだ。命とお金を比べるなと言われそうであるが、それも現実である。それから、航空管制は英語で行われる。自衛隊だろうが、ジャンボ機のパイロットだろうが、セスナのパイロットだろうが、一定の条件のもとでは英語で航空管制を受けることになる。たとえパイロットも管制官も日本人同士であっても英語で会話する。システムは古く(という表現が適切かどうかはわからないが)、母国語を使えない状況で、多くの航空機を安全に誘導するというのは神業に近いと思う。しかし管制官である以上、神業を通常業務としてこなす義務があるし、こなしてもらわなければ困る。
 飛行機だって事故をする。その前提がない以上、無責任な非難は続くだろうと思う。ただ、原因がわかった段階で非難されるべき人は非難されるべきだと思う。そんな事よりも、もっと現場を知っている人間が表に出て積極的に議論し、本質を見極めて根本的な解決に向けて頑張って欲しいと願うばかりである。現場を知らないような頭デッカチの人間がトヤカクいっている場合じゃない。「やがて航空管制は全て機械化されるだろう」という言葉を思い出した。機械化したら絶対にニアミスはなくなるのだろうか?それも疑問である。ニアミスが起こりそうな時の判断基準の優先順位は1番目が機長の目、2番目がTCAS、3番目が管制官の指示だそうだ。(注意:この意見にもいろいろな見方があるようです。またこの意見が正しいと言い切れるわけでもありません)アナログとデジタルが融合してこそ、安全が確保されるのではないだろうか?やはりデジタルは道具である。

関連サイト: 特集:日航機ニアミス、管制ミスが事故原因